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フレンチホットハッチの模範回答。ルノー「ルーテシア ルノー・スポール シャシーカップ」を試乗チェック

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今年春にマイナーチェンジしたルノーのコンパクトカー「ルーテシア」にスポーツモデル「ルーテシア ルノー・スポール」が追加。2017年7月6日(木)から発売を開始した。早速このモデルを試乗する機会を得たのでリポートしよう。

Bセグメントのフレンチホットハッチ

Bセグメントの中でもやや大柄の部類に入るルーテシアは、我が国において、ルノーの販売台数の半分近くを占めるという人気車種。同社でも「初めてのルノーを触れるに適した1台」と位置づけている。日本車ともドイツ車とも異なる、グラマラスなラインを描く特徴的なボディに、118psを発生する直列4気筒1.2リットルターボエンジンを搭載。6速デュアルクラッチトランスミッションと、しなやかな足回りと相まってスムースな走りを実現。筆者は登場時に試乗したが、その乗り心地の良さに「街中やちょっとした郊外へ出かけるのに必要にして十分な1台」と思うのは勿論のこと「人とは違うお洒落で個性的な1台が欲しい人には好適」だと感じた。

その「お洒落で個性的な1台」にスポーツ性能を加えたのが、この「ルーテシア ルノー・スポール」だ。ルノー・スポールとは、F1に参戦する同社のモータースポーツ部門の名称で、競技車両を作成するのはもちろんのこと、極限の世界で培われた技術を市販車へとフィードバックしたスポーツモデルを数多く世に送り出している。2014年には、多くの市販車が開発テストに用いるドイツの難コース「ニュルブルクリンク北コース」において、メガーヌ ルノー・スポール トロフィー Rが当時のFF量産車最速「7分54秒36」というレコードを樹立して、その性能と技術力を世界にアピールした。

ルノーのスポーツモデルは、トロフィーを頂点にシャシーカップ、GTというグレード分けがなされている。今回登場した「ルーテシア ルノー・スポール」もその例に漏れず、トロフィーとシャシーを用意。いずれも排気量を1.6リットルへと拡大した直列4気筒エンジンを搭載し、トロフィーでは220馬力、シャシーカップでは200馬力を発生する。

足回りもスポーティーな味付けがなされたものへと変更。ルノー・スポールがラリーなどの技術で培ったメインダンパーの中に小さなダンパーを備えた「ハイドロリックコンプレッションダンパー」と、アンダーステアの発生を抑制する「RSエレクトロニックディファレンシャル」と呼ぶ、旋回中にブレーキを軽くつまむ機構により、高いコーナーリング速度を実現する。ちなみに、トロフィーとシャシーカップではバネレートや車高が異なり、シャシーカップでは柔らかめにしワインディングが楽しめるように、トロフィーはサーキットで攻める味付けとしている。

外観で目を惹くのが、フロントバンパーに設けられたチェッカーフラッグのようなLEDランプ「RS Vision」。フォグとコーナーリングランプ、ポジションヘッドランプをルノー・スポールのアイコン型に一体化したもので、機能とスポーティーさを見事に融合している。

もちろん内装もスポーティーテイスト溢れるものへ変更。やや明るめの黒を基調に赤い刺繍や差し色が雰囲気を盛り上げる。シートもルーテシアとは異なる形状で、ヘッドレストにはR.S.の刺繍がなされている。

いわば「ホットハッチ」にカテゴライズされ、フォルクスワーゲンのポロGTIや、プジョー208GTIがライバルとなる「ルーテシア ルノー・スポール」。価格は最上位のトロフィーが329万円、シャシーカップが309万円、そしてシャシーカップから一部装備を取り除いた受注生産のシャシースポールが284万円だ。

大人のスポーティーカー

今回は、シャシーカップ仕様を試乗した。ルーテシアはマイナーチェンジによって精悍な印象へと変わったが、バンパー内のRS Visionによって、さらに力強さを増した印象。横に回ると、中央をややえぐったようなボディラインが美しい。リアブレーキがドラム形状であったのにルーテシアに対し、精悍さを与える黒のアルミホイールの隙間から赤いキャリパーが覗き見えるディスクブレーキが、さらにスポーティーなムードを漂わせる。

ドライバーズシートに座ると、メーター等の配置はルーテシアと同一。しかしハンドルに取り付けられた大型のパドルシフトが目を惹く。触れてみると、スイッチフィールは程よい柔らかさ。ドイツ車や日本車だとクリック感をかなり明確にするところ、しっとりとさせているところに「お国柄」を感じさせる。

ファブリックシートのクッションは厚めで、サイドの張り出しと相まって体をしっかりとサポートしそうだ。 運転席、助手席は広いものの、リアは窮屈。ここはボディサイズからして仕方のないところか。ラゲッジは十分な容量でゴルフバッグも入りそうだ。

手応え十分!スポーツドライビングが楽しめる

イグニッションボタンを押すと、ルーテシアとは違い車内に排気音が響きわたる。近所迷惑になるのでは? と、一旦車から降りて確認したが、外気では静かで驚いた。車内で排気音が聴こえるようなチューニングしているのだろう。やる気にさせてくれる演出に思わず頬が緩む。

走り始めた瞬間から、ルーテシアとは大きく異るスポーティーな乗り味に心が弾む。足回りもルーテシアとは大きく異なり、一言で言えば硬めだ。とはいえ、しなやかさが保たれ不快感は皆無。ギャップを一発で吸収してリバウンドは少ない。微振動をしっかり吸収するので、スポーツ系だから乗り心地は犠牲に、ということは無い。

旋回すると、ステアリング操作に対してフロントノーズがグイグイと曲がっていく。フロントが路面を食いついている感覚がしっかりと伝わってくる。重く手応え十分のステアリングフィールは女性には辛いかもしれないが、スポーツドライビングの気分を高めてくれるのに十分だ。

なによりボアアップしたエンジンがゴキゲン! かなり下の回転からトルクがあるため、軽やかに加速していく。ルーテシアに比べて80馬力ほどアップした恩恵は、ワインディングはもちろん、街乗りでも扱いやすく、手に余るということはない。特にワインディングでは、低く轟くエキゾーストノートと相まって、思わずアクセルペダルに力が入る。さらにアクセルやシフトのレスポンスが、ノーマルのルーテシアとは比較に鳴らないほど俊敏。変速が瞬時に決まり、レブリミット近くになるとシフトマークが点滅。しばらくすると自動的に一段上に変速する。

お楽しみは「R.S.ドライブ」で

そのシフトレバー近傍には、アクセルレスポンス、シフトスピードやタイミング、そしてハンドルの重さが変化する「R.S.ドライブ」と書かれたモード切り替えボタンがある。 単推しでスポーツモード、シフトレバーを左に倒してマニュアルモードにしてからの長押しすると、トラクションコントロールなどの電子制御をすべてカットするレースモードへと切り替わる。これらはメーターパネルのインジケーターで確認可能だ。

ワインディングの上り下りで、まずはスポーツモードを試した。アクセルやシフトスピードは一層俊敏に。ハンドルも一層重くなる。シフトアップはかなり上まで引っ張る傾向。コーナーの侵入でブレーキングする際、エンジンの回転数が高いと保護のためダウンシフトができない車もあるが、この車では変速が可能。エンジンブレーキをかけながらのブレーキングが可能だ。しかもブレーキを踏みながらダウンシフト側のレバーを長く押すと、適切な回転数をコントロールしながらの多段シフトを実施。エンジンレスポンスがよいので、パドリングを積極的に楽しみたくなる。 レースモードに切り替えると、ハンドルはより重く、そしてシフトスピード、アクセルレスポンス共にさらに俊敏に変化。より積極的に車を操りたくなる。ダウンシフト時に回転数が合わなければガクッとするし、コーナーでアンダーが顔を覗かせることも。それでもマニュアル車ほどではないが、車を自分で操っているという感覚が楽しいのだ。

さらなるお楽しみ機能として、このグレードの車には珍しいローンチコントロール機能を搭載。

日常生活で使うことはまずない機能で、使用時は周囲への配慮が必要であるが、停止時からの急発進時に、自動車が最適な回転数やトラクションをコントロールすることで、誰でも0-100km/hで約7秒という加速が体験できる。アクセルとブレーキを同時に踏み込み、独特のアイドリング音を聞きながら、ブレーキペダルをリリースした瞬間のタイヤからキュキュという音を立てて猛スピードで車速が上がってゆく感覚は、相当に楽しいものだ。普段使わないとしても、レース譲りの技術に触れられるのは嬉しいものだ。

走る楽しさを詰め込んだ1台

今回はシャシーカップ仕様であったが、トロフィーになると、より過激な方向へ向かうとのこと。試乗は叶わなかったので、その差をレポートすることはできないが、シャシーカップより硬い乗り心地になることは想像に難しくない。この絶妙なバランスが、普段使いとスポーツのよい落とし所であると感じた。いっぽうで気になったのは排気音。スポーツテイストの機運を高めるのに必要なものであるが、3000回転を超えたあたりから運転中の会話は困難だろう。ルノーは以前、メガーヌのスポーツモデルで排気音が聞こえないようにしたところ、多くのオーナーから「スポーツらしくない」との声が上がったため必要性を感じたそうだが、ニュルのFF最速に挑むMT車のメガーヌと異なり、この車を求めるのはライトなファミリー層であり、当然ながらママも運転することが多いだろう。走りより使い勝手が心地よさを優先する人にとって、排気音はやはり耳障りなもの。例えばマフラーに電子制御バルブを搭載しスポーツモード時のみエキゾーストが聴こえるなどの工夫があればと思った。

パパはスポーツカーが欲しい。けれどママはスポーツカーではなく、使い勝手のよい普通の車がいい。となると選ばれるのは、マニュアル車ではなく、AT車のスポーツモデルだ。この「ルーテシア ルノー・スポール シャシーカップ仕様」は、誰もがスポーツカーのテイストを感じさせながらも、それを無理強いさせることなく、それでいて走りは期待に十分応えてくれる1台だ。「お洒落で気軽に、それでいていざとなれば本気に」これがルノー・スポール シャシーカップ仕様の美質であり魅力であると感じた。

他とは違う楽しい車を世に送るルノーから誕生した「走る楽しさを詰め込んだ1台」に触れてみてはいかがだろう。

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