レビュー

もっとコーナリングを楽しく!HKSのS660用車高調を試す

更新日:

広告コード

発売から2年が経過したHondaのS660。オートサロン2016の会場でメーカーの開発責任者が「ミニ四駆のように、カスタマイズして自分だけの1台に仕上げてください」と語ったように、オーナーのチューンアップ率が高い車種で、販売するパーツ点数は1000点を超えるという。

HKSの自信作「究極のストリートダンパー」

実物を見るとあまりの小ささに驚くS660であるが、実は意外と車高が高く、最低地上高は125ミリ。これは現行NSXと比べて10ミリ高く、シビックTYPE Rと同値。NSXの全高が1.25メートルに対してS660は1.18メートルと低いにも関わらず最低地上高が高いのだ。さらに7人乗りワゴン車であるシャトルとは5ミリしか変わらない。だからか、真横から見たらタイヤとフェンダーの隙間が大きくかっこ悪く見えなくもない。スポーツカーたるもの、車高は低ければ低いほどカッコいいし、重心が下がるのでコーナーで安定する(と思われる)。

とはいえ、車高を落とすべく車高調を入れたとしても、どのように変化するかは実際につけてみないとワカラナイし、簡単に試せる金額でもない。そして実際にクルマに手を入れたら、ディーラーに怒れれて保証が切れてしまわないか、など疑問がいっぱい。とウダウダ考えても仕方ないし、ダメだったら戻せばいいとの考えで、車高を下げるべく車高調と呼ばれるサスペンションに交換してみた。

今回試したのは、長年にわたりスポーツカー向けのアフターパーツを製造・販売するエッチ・ケー・エス(HKS)のS660用サスペンション「HIPERMAX IV GT」(267,840円)だ。

HKS「HIPERMAX Ⅳ GT」(267,840円)

HKSがサスペンションを開発し販売をはじめたのは約30年ほど前から。サスペンションを構成するスプリングをはじめとするパーツを自社で設計・製造。2年4万キロと長期間の保証をするほか、オーバーホールにも対応している。ガス室とオイル室を同じ筒の中に収めた単筒式が特徴で、モータースポーツ参戦などノウハウを蓄積、性能にも定評がある。 同社では車種やシチュエーションによって多数のモデルを用意。

フロント側サスペンションの取り付け部

今回試すHIPERMAX IV GTシリーズは、同社が「究極のストリートダンパー」として開発したという自信作だ。普段使いでの快適性やローダウンによるスタイリッシュ性を追求しながらも、減衰力を最大とすることでサーキット走行にも対応する、としている。

S660用HIPERMAX IV GTは、キャンバー角の設定などマニアックなことはできないものの、30段階の減衰量調整機能を有するほか、オプションで±1kgの可変幅でバネを用意。外観上の特徴は、フロント側のアッパーマウント。約5cmほどオフセットすることで、ストローク量を稼いでいる。

「スーパー」が付くオートバックスで取り付け

スーパーオートバックス246江田

取り付けはHKS商品を取り扱うプロショップの他、オートバックスやイエローハットなどカー用品専門店でも行うことができる。プロショップは初心者には入りづらいところがある。そこで入りやすい量販店でありながら名物メカニックがいる「スーパーオートバックス246江田」にて行った。オートバックスには幾つか種類があるが、このようなカスタムパーツの取り付けが可能な店舗には「スーパー」の名を冠するという。

オートバックス246江田のメカニック金子氏

メカニックの金子氏は、15年以上に渡って勤務する大ベテラン。自らサーキット走行も楽しまれているという車好きという、オートバックスグループの中でも知られた存在だ。

交換作業は2時間程度

取り付けはまず、標準の車高計測から始まる。「何センチ車高を下げますか?」と尋ねられるが、初心者にその質問をされてもよくわからない。知ったかで答えてもロクなことにはならないので、HKS推奨値で進めてもらうことにした。ちなみに商品の工場出荷時の設定は前側が22ミリ、後側は約28ミリ下がる。ちなみに車高調取り付け前、地面からタイヤハウスの頂点まで

車高調取り付け前のフロント側

フロント側は605ミリ、リア側は

標準状態のリア側

625ミリであった。計測後、いよいよ作業開始。

ジャッキアップ後、ホイールが取り外されフロント側についているカバーを取り外すとサスペンションの取り付け部分が露わになる。このカバーによって底面がフラットになり、空力的に良い影響を与えるとか。

ノーマルのサスペンションがついた状態

標準でついているサスペンションを1本づつ取り外し取り付けていく。床には一つづつ、長年走りを支えてくれた黒いサスペンションが並べられていく。

純正のサスペンション

ちなみにこのサスペンション。ディーラーでサービスパーツとして取り寄せると1本あたり約3万円といいお値段がするため、捨てるのは勿体無い気分になる。先に棒でもつけたら子供が遊ぶ「ホッピング棒」になりそうなどと再利用法を考えてみたが、大人が乗ってみても少しだけ沈む程度だった。使い道はないけれど、万が一のことも考えてお持ち帰りすることにした。

作業を進める金子氏

取り外したサスペンションでピョンピョン遊ぼうとしているアホな私を横目に見ながら、金子氏は黙々と作業を進めていく。1か所あたりの作業時間は約30分。実はまる1日かかるものと思っていただけに驚く。

自重をかけて調整

組み込み時にジャッキを降ろし車体に自重をかけた状態で増し締めや調整を実施。1G締め付けと呼ばれるこの作業は、S660の製造現場でも行われているもので、サスペンションがしなやかに動くようになるという重要な工程。クルマはブレーキローターだけで支えられており、これが外れたら……と思うとドキドキしながら、作業を見守る。

取り付けられたHIPERMAX Ⅳ GT

こうして2時間後、HKSの車高調が取り付けられた。取り付けで難しいところは? と尋ねてみると、金子氏は「小さい車だから作業しづらい、ということはないが、フロント側のロワーアームを外した方が作業しやすい。」とのこと。

金色のリングを動かすことで車高が変わる

車高の調整は、サスペンションを取り外すことはなく実施可能。ジャッキで車体を上げてタイヤを取り外せばできなくはないが、素人には難しそうだ。自分は工賃を払ってもお願いすることになるだろう。気になる工賃は2万円ほど。

車高を下げても日常生活に問題ナシ?

減衰力も車高も工場出荷時のままで、都内の一般道を走ってみた。フロントは580ミリ。

HIPERMAX取り付け後のフロント側

リア側は605ミリ程度に落ちた。つまり前後共に約2cmのダウン。下世話だが、1cm下げるのに約12万5000円かかった計算になる。

HIPERMAX Ⅳ GT取り付け後のリア

まず感じたのは視点の低さ。わずか2㎝程度の差しかないはずなのに、相当な違いを感じる。車高を下げてのデメリットである扱いづらさが気になるところだが、コンビニやガソリンスタンド、立体駐車場の段差で底をすることはなく、日常使いに問題はなさそう。ただこれより下げると、古い立体駐車場でひっかかるかもしれない。

ちなみに乗降性は悪化。S660はもともと乗降性があまりよくなく、ディーラー曰く「身長178cmを超える人は、試乗する前の乗り降りだけで大抵S660を諦めてしまう」という話を聞いたことがある。それは天井の低さと、相当腰をかがめるため。ただでさえそれなものだから、2cm下げただけでも「よっこらしょ」となる。

フットワーク軽く、回頭性が向上!

普通乗用車に比べると硬めの乗り心地であるS660。HKSのHIPERMAX IV GTは新品ということもあるだろうが、確実に硬くなったと断言できる。しかし質が異なり、ノーマルがゴツゴツしたものだとすると、HKSはコツコツとした角が取れたような印象。これは日本車にはあまりない感覚で、強いて挙げるならVWポロGTIに近い硬さと質だろうか。S660の場合はさらに軽快さが加わり、僅かな跳ねを感じさせながらも、収まりがいいから苦にはならない。しかしこれ以上硬くなると、自分にはちょっと厳しい。S660用には、このHIPERMAX Ⅳ GTのほか、バネレートのアップなどサーキット走行に適したSPを用意するが、「俺は走り屋だから」などとカッコつけてSPを選ばなくて良かったと思った次第。

スポーツショックということで、ピーキーなところがあるのかと思ったが皆無。挙動は穏やかだ。バネレートがフロント3kg、リア4kgということで、オリジナルほどでは無いにせよコーナーでは緩やかにロールする。前はステアを切ってアウト側に荷重がかかっている、アクセルを踏んで後ろに力がかかっているという「どこに今荷重がかかっているのか」がつかみやすい。

車高調をインストールしてからのS660は、もともと持っていた美質である軽快さをさらに増した印象だ。回頭性がよく交差点などごく低速からコーナーリングが楽しめる。そしてノーマル以上にアクセルを踏んで曲がっていける。自分は現在販売しているコンパクトカーを幾つか試乗したことがあるが、ここまで頭の入りがよくフットワークの軽いクルマは思いつかない。

高速道路に乗ると、ノーマルとHKSの車高調との差は一層顕著に感じることができる。安定感はもちろんのこと、道路のつなぎ目などで明らかにショックの戻りが減っている。標準では「ちょっと怖いな」と思っていた東名高速下り線の大井松田IC〜御殿場IC間の「右ルート」が楽しくて仕方がない! ハイスピードコーナーを恐怖感を覚えることなく、走り抜けることができる。これに強化スタビを入れてロール量を減らしたら……とか思ったりも。

強化スタビを入れたくなる、というように、1カ所をいじると他もいじりたくなるのが人間の欲深さであり悲しい性だ。走りに大満足のサス交換であるが、気になるのは、今まで感じることがなかった純正ホイールとの「違和感」。例えば大きな衝撃を受けた時、純正ではタイヤ、ホイール、サスといった足回り全体で吸収していたものが、その動きがチグハグな感じがするのだ。ホンダは当然ながらホイールとセットで足回りを決めている。そのバランスを崩したのだから、何かしらの違和感を覚えても不思議ではない。

となると気になるのはHKSが何のホイールを使ってテストしていたのかということ。デモカーを見ると横浜ゴムのホイール(ADVAN RACING)を使っている場合が多い。となると、確証はないが、ADVAN RACINGのホイールにした時、もしくは同等重量のホイールにした時に、HKSが目指すであろう足回りが完成するのではないだろうか。機会があればホイール交換を試してみたい。(そのような機会はないだろうが)

減衰力調整はちょっと面倒

リア側の取り付け部

HKSのHIPERMAX Ⅳ GTは、30段階の減衰力調整機構を設けている。これを試そうとしたところ、車体上部ではなく下部に調整機構があることが発覚! つまり車体下に手を入れて、まさに「手探り」で探さなければならない。そして不器用な自分にはどの位回したのかすらもよくわからない。逆に言えば「普段から触らなくてよくなった」とも思える。また、付けたばかりの状態でいじると泥沼に嵌りそうな気もした。ここはサスの慣らしが十二分に終わってから試そうと思う。

ディーラーに持ち込んでも何も言われない

車高調を取り付け後、ディーラーから定期点検の通知が来たので、断られたらどうしようと思いながら持ち込んだ。ましてディーラーではModuloブランドでサスペンションを販売しているだけに、「なんでModuloのサスにしなかったんですか!土屋圭市さん監修なんですよModuloは!」などと言われたらどうしよう、などと変な気を回しはじめてしまった。

不安をかかえながら、よく冷えたアイスコーヒーを飲みながら待つこと数時間。定期点検は断られることはなく無事に終了。メカニックの人から「変えたんですね」と言われたこと以外、土屋さんの名前も出ることもなかった。ただ下げすぎると車検が通らないとの注意を受けた。現状で車検が通るのかどうかは不明だが、何か言われたら車高を上げればいいだけの話だ(多分)。

車との付き合いが、より積極的になる

HKSのHIPERMAX Ⅳ GTは、走りを愉しむためのカスタムパーツかと思っていたが、それ以上に「上質さ」を提供してくれた。なるほど、たしかに同社が「究極のストリートダンパー」と言うだけはある。そして車高や減衰力を調整することで、学びながら自分好みの1台にすることができそうだ。それは、もっと積極的にクルマと向き合えることにもつながりそうだ。

ノーマルでも楽しめるS660。それに刺激的なスパイスと上質な乗り心地を手に入れることができるHIPERMAX Ⅳ GT。HKSでは時々試乗会を実施しているので、その折に試してみてはいかがだろうか。

アドセンス




アドセンス




-レビュー
-, , ,

Copyright© Portrait in CARS , 2018 All Rights Reserved.